可愛くないから、キミがいい【完】
ーー『デート』
ぶっきらぼうに放たれた三文字に、とくん、と跳ねた心臓の部分は、全然自分の意思ではなかったから、あとでお仕置きすることにする。
「は、」
『どう考えても、お前をデートに誘ってんだろ。分かれよ』
「はあ?」
『もう一回聞くけど、来週の土曜、空いてる?』
一応、空いてはいる。
来週の土日は予定をひとつもいれていなかった。幸いなのか災いなのか、そんなのは後者に決まっているけれど。
まだ予定はないくせに、和泉しゅうには、どうしても素直に空いてるとは言いたくなかった。
口を噤んで、しばらく考える。
どうしたいのか、どうするべきなのか、頭の中はぐちゃぐちゃで、また和泉しゅうにペースを乱されていることを実感する。
『お詫びもさせてくれねーのかよ』
「だって、和泉君が、偉そうなんだもん」
『それは、悪かったな。たぶん、俺なりに照れ隠ししてるんだわ』
「……意味わかんないし」
『ちなみに、お前のメリットはあるよ』
「なに」
『デートは、ちゃんと俺がお前のことを楽しませるから、お前は絶対楽しい』
「……何それ」