可愛くないから、キミがいい【完】






ーー『デート』



ぶっきらぼうに放たれた三文字に、とくん、と跳ねた心臓の部分は、全然自分の意思ではなかったから、あとでお仕置きすることにする。



「は、」

『どう考えても、お前をデートに誘ってんだろ。分かれよ』

「はあ?」

『もう一回聞くけど、来週の土曜、空いてる?』



一応、空いてはいる。

来週の土日は予定をひとつもいれていなかった。幸いなのか災いなのか、そんなのは後者に決まっているけれど。


まだ予定はないくせに、和泉しゅうには、どうしても素直に空いてるとは言いたくなかった。

口を噤んで、しばらく考える。


どうしたいのか、どうするべきなのか、頭の中はぐちゃぐちゃで、また和泉しゅうにペースを乱されていることを実感する。



『お詫びもさせてくれねーのかよ』

「だって、和泉君が、偉そうなんだもん」

『それは、悪かったな。たぶん、俺なりに照れ隠ししてるんだわ』

「……意味わかんないし」

『ちなみに、お前のメリットはあるよ』

「なに」

『デートは、ちゃんと俺がお前のことを楽しませるから、お前は絶対楽しい』

「……何それ」




< 123 / 368 >

この作品をシェア

pagetop