可愛くないから、キミがいい【完】
繋いでしまっていた手を一度解いて、自分が頭につけるつもりのものを手首にかけ、もうひとつのカチューシャを差し出せば、和泉しゅうは思いっきり嫌そうな顔をした。
目つきが悪いから、一見、かなり怒っているようにも見える。でも、別に、今更、彼相手にビビるなんてことはしない。
差し出した状態で、澄ました表情のまま上目で和泉しゅうを見ていたら、彼は、はー、と大きなため息をついて、カチューシャを私から受け取った。
「お前、大嫌いな相手とおそろいにしたいの?」
学祭の日、可哀想だと言われて、悲しくて、捨て台詞のように吐いた“だいきらい”を、和泉しゅうはしっかり覚えているみたいで、嫌味のように言ってくる。
「別に、顔は載せないし。匂わせって知らないの?」
「知らねーけど、まあ、いいよ。人生一回だし」
「どういう理論なわけ?」
「二度とやらねーだろうから、してもいいだろってこと」
そう言って、和泉しゅうは、りすの耳のついたカチューシャを頭にはめて、壁に備え付けてある鏡で自分の姿を確認していた。
全然似合ってない。
しいて言うなら、裏カジノで捕まって刑務所から復帰した悪いボスリスって感じだ。自分の姿を見て、あまりにも嫌そうな顔をするから、ざまあみろとも思ってしまう。