可愛くないから、キミがいい【完】
私も、手首にかけていたカチューシャを一度自分の頭にはめてみる。
鏡で確認したら、和泉しゅうの何倍も似合っていて、満足する。
なんだかそれで気を抜いてしまって、相手は和泉しゅうであるのに、「みゆ、どう?」と反応を求めてしまった。
聞いてすぐに後悔する。可愛いなんて絶対に言ってくれない相手から、欲しい言葉なんてない。
和泉しゅうは、まだ似合わないカチューシャをはめたまま、私をじっと見下ろし、ぱちりと瞬きをおとして。
「か弱いリス演じて、木のみ催促して、裏でほくそ笑んでるリス?」
そんな最低なコメントだけ残して、私の頭からカチューシャを勝手に取って、そのままレジの方へ行ってしまった。
慌てて、追いかける。
こんなことならさっき、あんたは釈放あがりのリスみたいだからって言ってやればよかった。