可愛くないから、キミがいい【完】




好きにしていいという言葉を利用して、絶対に嫌がることを強要するような意地悪をしたつもりだったのに、そのまま、私の分のカチューシャもまとめて買ってくれた彼に、また、複雑な気持ちになってしまう。


なんだか、貢がせているみたいだ。

他の(イケメンな)男の子だったら、純粋に嬉しくなれるような行為も、相手が和泉しゅうでは、気まずいだけ。



「“わー、ありがとう、助かる”、は?」


ショップの出口。

ゲートをくぐるときに可愛く言った建前だけの台詞を真似たような口調は、完全に私のことを馬鹿にしていて、ちゃんとお礼を言うつもりだったのに、そういう気さえなくしてしまう。



「頼んでないのに、和泉君が勝手に買ったんでしょ。……ありがとうだけど、」

「ん、ほら、つけるならつけろよ」



そう言って、差し出されたものを受け取って、頭につける。和泉しゅうも、また嫌そうに自分の頭に私と色違いのリスのカチューシャをつけた。




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