可愛くないから、キミがいい【完】
一度、携帯の写真投稿アプリを起動させて、一日で消える設定の動画を撮る。
まずは、テーマパークにいることを示すためだけに、まわりの風景を映した。10秒くらいの短いものだ。
撮り終えて、フィルターをかけて。“久しぶりだからわくわく”という文字と、位置情報、それから、妖精のステッカーを貼って投稿する。
それから、内カメラにして、前髪とカチューシャの位置だけ整えておいた。
「まだ?」
隣で、和泉しゅうが半分呆れたような表情で聞いてくる。何してんだよ、さっさと行くぞ、の顔だ。
会った回数は片手で収まるくらいなのに、分かってしまうのは何でなんだろう。
もう二度と会わないって、何度も思った相手なのに、もうずっと前から知り合っているような気分になってしまっているのも不思議で、とても不本意だ。
「みゆは、SNSに投稿しないといけないの」
「義務かよ」
「……どうせ、また、可哀想とか思ってるんでしょ」
「いや? 別に、今日は迷惑はかけられてないし」
「へえ」
「そういうのが、“生きがい”なら、いいんじゃねーの。俺が、文句言う権利もないなって気づいたわ」
まったく理解はできねーけどな、と付け足して、また、手をさらわれた。包むようなつなぎ方から、また、指を絡めるようなものに変わる。
和泉しゅうの繋ぎ方の癖なんて、別に知りたくない。
それに、やっぱり、別のエスコートの仕方にしてほしい。手を繋ぐという行為を嫌々されたって、こちらは何にも満たされないのだ。