可愛くないから、キミがいい【完】
そもそも、いつまで手を繋いでいるつもりなのだろうか。やっぱり、離してしまいたい。
恋に落とすつもりもない人と手と触れあっているなんておかしな話だし、自分の存在をしっかり保ちたいという気持ちが強くなってきてしまう。
触れあうって、本来、自分の輪郭があいまいになるということなのだ。
何かに降参したような気持ちで、エスコートはもういいよ、と和泉しゅうにだけ聞こえる声で言う。
彼は不可解な顔をしながらも、何も言わずに、すんなりと私の手を解放した。
「つーかさ、」
「なに?」
「SNSの何がそんなに楽しいの?」
「……そんな顔で、聞いてくる人に教えないもん」
教えたところできっと、この男の人には分かってもらえないと思う。
そんな顔ってどんな顔だよ、と、しかめっ面をされる。リスのカチューシャとのバランスの悪さに、思わず、少し頬をゆるめてしまった。
それから、しばらくパークの中を並んで歩いていたら、すいているアトラクションを見つけて、私と和泉しゅうは、とりあえずそれに乗ることにした。
屋内の暗闇の中をぐるぐると走るジェットコースターだ。
待っている間、会話なんてせずに退屈に過ごすのかと思ったけれど、意外にも会話が続いてしまい、あっという間にアトラクションに乗る時間がやってくる。