可愛くないから、キミがいい【完】
外に出ると、和泉しゅうはさっぱりとした表情をしていて、アトラクションのときに外していたカチューシャを、頭ではなく首にかけた。
私は、髪型を整えて、もう一度頭にはめる。
「みゆ、変じゃない?」
「おー、可愛い、可愛い」
反応を求めれば、一瞥の後の、棒読みの“可愛い”が返ってくる。信用ならないから、結局、自分の携帯のカメラでチェックをした。
最初からそうすればよかったのだ。
またしばらく歩いてパークの奥へ進むと、お気に入りのキャラクターエリアで写真映えしそうな壁を見つけて、そこへと向かった。
壁の前で立ち止まった私に、和泉しゅうはまた不可解そうに眉をひそめて、「なに?」と言う。
「和泉くん、カチューシャ、頭につけて。映えそうだから、みゆここで写真撮りたい」
「は? 蠅? いたか?」
「違う、お洒落な場所だから、写真撮りたいって意味だよ。カチューシャつけてよ」
なるほどな、と和泉しゅうは、首にはめていたリスのカチューシャを頭につけて、面倒くさそうな表情を浮かべた。