可愛くないから、キミがいい【完】
嫌々やらせているけれど、周りには絶対にそう思われたくなくて、人が通ったタイミングで、「もう。そんなに照れなくていいのに」と可愛く言っておく。
案の定の、和泉しゅうの、は?という顔は、スルーさせてもらった。
壁を背景にして、内カメラに設定する。
加工アプリだけれど、フィルターはかけない。
美白の部分だけ細工をした。
匂わせの意味も、渋々、和泉しゅうにこっそりと説明して、隣に並んでもらった。どうせまた白けたような気持ちにさせたのだろうけど、どうだっていい。
「和泉くん、屈んでよ」
「あのな、すでに、結構屈んでんだよ」
「見切れてたら、意味ないんだからね」
窮屈そうに背を曲げる和泉しゅうの表情は果てしなくウンザリとしたものだったけれど、別に顔は載せるつもりが一切ないから、気にしない。
髪が触れるくらい近づいても、別にドキドキなんてしないのだ。
だって、和泉しゅうも私に対して一切頬を赤らめたりしないし、意識のいの字もないような目しか向けてこないのだから。