可愛くないから、キミがいい【完】
嫌そうな顔のまま、こん、と柔い衝撃の後、和泉しゅうに頭をくっつけられる。
その瞬間、跳ねた心臓の音なんてものは、ただの誤作動でしかなく。
「嫌いな相手と、こんなことできる神経の図太さに改めて驚いてるわ」
「それは和泉くんだって、同じなくせに」
「どうだろうな」
「じゃあ、なに、みゆのこと、好きとか言っちゃうわけ?」
ばっかみたい、と、完璧な冗談で反撃する。
カメラの映像越しに、和泉しゅうを見たら、「撮るなら、さっさと撮ったら」と、質問にも答えず、また偉そうに言ってきた。
位置を調整して、どうせなら、と可愛く笑った後、シャッターボタンを押す。
三枚撮った時点で、「まだ、撮るのかよ」と呆れたように和泉しゅうは文句を垂れてきたけれど、好きにしていいと言ったのは彼なので、私は構わずにシャッターボタンに触れた。