可愛くないから、キミがいい【完】
十枚ほど撮ったところで、ようやく満足のいく一枚が撮れて、目から下を切り取って、お気に入りの明るさにしてしまう。
やっぱり、リスのカチューシャにして正解だったなあと思っていたら、突如、画面に影ができた。
顔をあげれば、カチューシャをすでに首に戻して、私を見下ろす和泉しゅうがいて。
「……写真、欲しいならあげてもいいけど」
そう言って、携帯を差し出したら、ふ、と感じ悪く吹き出すように笑われる。
「もらってほしいなら、そう言えよ」
「もらってほしいなんて、みゆ、ひとつも思ってない」
和泉くんこそ、いらないならそう言えば、と言い返そうとした。だけど、その前に、和泉しゅうは、なぜか自分のスラックスのポケットから携帯を取り出して。
まるで、QRコードでも読み取るかのように、私の携帯から少しの間をあけて自分の携帯を重ねたかと思ったら、カシャ、と雑なシャッター音のあと、彼の携帯の画面には、今まさに私の携帯の画面に表示されている写真がピントのずれた状態で表示された。
二人の額から上とカチューシャだけ切り取られたもの。私の指まで映ってしまっている。