可愛くないから、キミがいい【完】
ちら、と不自然じゃないようにのぞくとバレてしまい、「見たい?」と問うてくる。
首を横に振ったけれど、「暇なんだから、見ればいいだろ」と言われ、携帯の画面を私が見やすいところまで下げてきたから、仕方なく、一緒に見ることにした。
字幕付きの映画を、無音で見るのもいける人らしい。画質的にかなり古いもののように思う。
知らない映画を途中から見るなんてナンセンスだ。しかも無音である。いくら映画が好きだと言っても、きっと退屈だ。
なんて思ったけれど、まだ物語は始まったばかりらしく、結局、待ち時間の三十分ほど普通に夢中になって見てしまった。
「………みゆ、さっきの続き気になるんだけど」
「映画?」
「うん」
「見たい?」
「だって、いいところで終わったから」
アトラクションに乗り終えたあとも、なんだか続きが気になってしまって。
エリア内の飲食スペースに移動した後、二人掛けの椅子に並んで腰かけて、続きを見てしまうことにした。
テーマパークの中で、映画を見て過ごすなんて、きっと過ごし方の模範解答とはかけ離れているけれど、相手が和泉しゅうだと思うと、どれだけの不正解を連発してもいいような気がしてしまう。
期待してないし、期待されていないから。
気にするべきは、周りの目だけなのだ。