可愛くないから、キミがいい【完】
「まじで腹減った」
時間にして一時間と少し。
エンドロールが流れるのを見届けたあと、和泉しゅうがお腹をさすりながら、ぼそりと呟く。
腕時計を確認したら、ちょうど二時半で、お昼どきは、とうに超えていた。
そう言われれば、確かにお腹がすいている気がしなくもない。
ここで食う? と尋ねられた声に、頷いたら、和泉しゅうが立ち上がる。
「お前は、ひとりで荷物番な」
「……別にいいけど、みゆが、―――「“ナンパされてもいいわけ?”」
今まさに言いかけたことを、クリアではない低い揶揄っている風な声で、かぶせるように言われる。
口を噤んで、こっそりと和泉しゅうにだけ分かるように睨んだら、「もう、お前が言いそうなこと、なんとなく分かってきた」と、ほんの少し得意げに口角をあげられた。
何にも知らないくせに、偉そうなこと言わないほしい。