可愛くないから、キミがいい【完】
「なんだよ」
「写真、撮るから、待ってってことだよ」
「は? 俺が食うパフェだけど」
「知ってるけど、可愛いんだもん。みゆが食べてることにするの」
眉をひそめる和泉しゅうを無視して、パフェとラーメンの位置を一度入れ替える。
それから、料理が美味しそうに撮れるカメラアプリを起動させて、何枚か写真におさめた。
「また、SNS用かよ」
「そうだけど、文句言わないでよね。だって、今日はそういう約束だもん」
「だれに向けてのアピール?」
発信するむこうに明確な誰かがいるわけではない。
ただ、不特定多数の、もう少し具体的に言えば、自分より可愛くない女の子たちを羨ましくさせて、かっこいい男の子たちにいいなあと思ってもらうためのもの。
可愛いの構成要素。
どうせ、和泉しゅうには理解できない。
「教えないもん」
「あっそ。どうでもいいけど早くしろよ。こっちは、さっさと食べたいから」
いい写真を撮り終えて、またラーメンとパフェの位置を戻す。
怖い顔をしているくせに、甘党なんてやっぱり変なのだ。
スプーンですくった瞬間、うま、と僅かに口角をあげた彼を目の前にして、私は静かに麺をすすった。