可愛くないから、キミがいい【完】
「広野」
じっと見てしまっていたら、突然、名前を呼ばれて、慌てて視線を逸らす。
それから、もう一度、何の気なしを装って見上げれば、「何時までいたいの?」と微かに首を傾げられた。
「みゆ、門限は十時だから」
「帰りたいなら、帰るけど」
「……パレード見ないで帰るとか、ありえないと思う」
「ありえはするだろ。俺は興味ない」
「みゆは、あるもん。あと、メリーゴーランドも乗ってない」
別に、まだ和泉しゅうといたいとかそんなこと思っているわけでは、断じて、ない。
ただ、どうせなら、パレードは見たいし、せめて、お姫様みたいな気持ちになりたいだけ。
暗闇は、勘違いされそうな感情の諸々を隠してくれるからありがたい。
じっと見上げたまま返事を待っていたら、「じゃあ、メリーゴーランドからな」と、和泉しゅうは呆れたように言った。