可愛くないから、キミがいい【完】




夜のテーマパークは、雰囲気があって昼間よりも好きかもしれない。


ずっと歩き回っていたから、少し疲れているけれど、和泉しゅうが歩くペースを私に合わせてくれているからか、早足にならなくてすんでいる。


なんとなく、「遅くないの?」と聞いてみたら、「今更だろ」と嫌味たっぷりに言われたから、聞かなければよかったと後悔した。




メリーゴーランドの場所に辿り着く。

ラッキーなことに、あまり並んでいる人はいなかった。



「待ってるから、乗って来いよ」と当然のように言った和泉しゅうに、「一人で並ぶとか、絶対に嫌なんだけど」と文句を言ったら、渋々感満載ではあったものの、一緒に乗ってくれた。




「乗りたかくなかったわけ?」

「こういうの乗ると身体痒くなんだよ」

「ふうん。みゆはそういうの格好悪いと思う」

「なんとでも言えば」



数分の待ち時間の後、隣同士の違う白馬に乗ったところで、メリーゴーランドはまわりだす。

ちょっと古い感じの、ぜんまい仕掛けのようなメリーゴーランドの音楽が私は好きだったりする。


乗りながら、少しずつ変わっていく風景を動画で撮る。その隣で、和泉しゅうは、眠たそうに欠伸をしていた。


やっぱり、王子様とは真逆の男だ。






< 159 / 368 >

この作品をシェア

pagetop