可愛くないから、キミがいい【完】
乗り終えてからは、メリーゴーランドの前で一枚だけ写真を撮ってもらって、パレードが通る場所へ行った。
興味ない、と言っていたくせに、結局、和泉しゅうはしっかり楽しんでいたように思う。
和泉しゅうの隣にしゃがんだまま、キャラクターに可愛く手を振ったら、「アホかよ」と言いながらも、自分も小さく手を振っていた。
ふうん、って唇を尖らせたくなる瞬間が、夜にかけてだんだんと増えてしまった気がした。
色とりどりの鋭い光に照らされた横顔だけは、やっぱり嫌になるくらい整っていて、なんだか、許してあげるために会っていることを忘れてしまいそうになっていた。
パレードのキャラクターをのせた大きな乗り物が全て通り過ぎた後、「帰るぞ」とほんの少し疲れたような雰囲気で立ち上がった和泉しゅうの声に、かぶせるように、「お城の前で写真だけ撮らないとだめなんだけど」と言う。
名残惜しいなんてそういうことではなく。
お終いにするには、
まだ少し魔法の力が足りない気がして。
本当は魔法なんて信じていないし、絶対に馬鹿にされるにきまってるのに、それでも和泉しゅうにならば、言っても平気だと思っている自分がいて。
「門限大丈夫なのかよ」
「ギリギリ大丈夫だもん」
「じゃあ、いいけど」
「和泉くんは、門限ないわけ?」
「うちは別に。結構、放任だな。犯罪さえしなかったらって感じ」
「ふうん」
だから、なんだかこんなにも自由な感じなんだ。