可愛くないから、キミがいい【完】
数分の後、ちゃんとしたの撮れたぞ、と言われて、和泉しゅうの元へと向かう。
「ちゃんと、可愛く撮ってくれたんだよね?」
「おー、可愛い、可愛い」
「全然嬉しくない言い方なんですけど」
はは、と、和泉しゅうのしゃがれた笑い声が鼓膜に触れる。
周りには人がいなかったから、もうすべての可愛いフィルターを解除して、「あんた、馬鹿にしないでよ。ムカつく」と平気で怒りをぶつけた。
和泉しゅうに携帯を持ってもらっているままに、写真を確認する。二枚ほどしか、人に見せられるような写真がなかった。
「和泉くん、下手くそなんだけど」
「文句しか言わねーのな」
「だって、本当に下手なんだもん」
「あっそ」
指を滑らせて、写真をスライドさせる。
三枚目は、指がうつりこんでいるもの。
四枚目だけは、比較的に上手に撮れていて、夜のお姫様みたいに笑えているから、お気に入りに登録しておいた。