可愛くないから、キミがいい【完】
帰るぞ、と、唇がお終いの音を紡ぐ。
頷こうと思った。
だけど、なんだか、首は縦に動いてくれなくて。
「広野?」
今日は好きでいろよ、と言われた。
相手は、最低サイアクな和泉しゅうだった。だからたくさん、他の男の子の前ではありえないくらいの我儘を押し付けたはずだし、偉そうにいたはずだ。
私、ちっとも天使じゃなかった。
なのに、和泉しゅうは、時々嫌そうにしながら、それでも楽しそうに私の隣にいた。
いつもは、そう。
与えるものより、受け取るもののほうが多くないととっても不安になる。尽くされることで、はじめて尽くしたいと思う。
尽くされるためにしか、尽くさない。
その方程式しか、私、いらなかった。
だけど、今日は、押し付けすぎたのに、求められなかった。
求められないことに、ムカつきながらも、本当は、どこかで安心していて。
認めたくないけれど、帰るぞという言葉に、すぐに頷けないくらいには、楽しいと思ってしまっていて。