可愛くないから、キミがいい【完】
「だから、……みゆも、ごめんなさい」
そう言った瞬間に、返事ももらってないのに、こころの棘が抜けてしまったような気がした。
和泉しゅう相手には、可愛く謝ることなんてできないし、しようとも思わない。もともと、素直になるのは、恥ずかしくてあんまり好きじゃない。
だから、素直になれずに、それでも、どうしても、謝られっぱなしは嫌で。
唇を一度、ぎゅっと結んで、和泉しゅうの反応を確かめる。彼は、驚いたのか僅かに目を大きくさせて、瞬きを落とした。
その間にむずむずしてしまって、
もう一度、唇を開く。
「和泉くんのおかげとかじゃないけど、もともとテーマパークは好きだし、今日も、楽しかった」
むずむずを誤魔化すために付け加えたはずの自分の言葉に、更にむずむずしてしまって、目を逸らそうとした。
だけど、その前に、和泉しゅうの口角がゆるくあがって、いつもは目つきが悪いだけの目を、ほんのわずかに優しく細めたから、逸らすに逸らせなかった。
「ん、分かった」
それは、初めて見る顔だった。