可愛くないから、キミがいい【完】




気安く触らないで。
簡単に大丈夫だと言わないで。

肯定と否定を両方押し付けて、
目つきの悪い顔で笑わないでほしい。


大丈夫だと言うなら、私が、納得できるまで、甘やかして、可愛いって言って、大切にして。

それが、私にとって、大丈夫、ということだ。


和泉しゅうは、どうして、可愛くいない私に対して、それでいいって本当に思っているような顔をしてくるんだろう。



「まじで、帰るぞ」


屈んでいた背を起こしてそう言った和泉しゅうに、不気味な色に溶けていった思考を慌てて葬る。


頷いて、歩きだす。


夜の風が頬を撫でた。

それが、なんだか、とても冷たくて。


知らぬ間に、頬に熱をもってしまっていることを悟った。




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