可愛くないから、キミがいい【完】
だって、和泉しゅうと初めて会った日から今までの間に、最悪なことがたくさん起こっている。
終電の心配をしなければならないなんてこと、うまれてはじめてだ。
なんて。だめだ、分かっている。
これは、ただの、責任転嫁である。
メリーゴーランドに乗りたいと言ったのも、パレードを見たいと言ったのも、お城の前で写真を撮りたいと言ったのも私で、夕暮れ時にパークを出てしまえば、普通に帰れたかもしれないのだ。
「どうしよう。みゆ、帰れないかも」
「ちょっと歩けば、タクシー拾えるかもしれねーけど、まあ、ここにまだこれだけ人がいること考えると、可能性は低いな」
「門限とか言ってる場合じゃないんですけど。終電も微妙なんだから」
「あのな、俺も、家に帰れねえのは一緒だわ」
「……みゆ、親に電話する」
「ん。そうしろ。俺もちょっと人に電話かける」
心配性のパパに電話をかけるのは、なんだか危うい気がして、ママに電話をかける。
親との会話を聞かれるのは嫌だし、和泉しゅうも電話するみたいだったから、少しだけ離れた。
耳に携帯を押し当てたまま、しばらく電子音を聞いていた。だけど、一向に、ママにはつながらない。
本当に嫌になって、溜息をついてしまった。