可愛くないから、キミがいい【完】
「どうしたの?そろそろみゆ帰ってくるよね?」
「電車止まって、再開の目処たってないの。門限というより、終電が無理かも。ママかパパ、本当にごめんなさないだけど、迎えに来てくれたりする?」
「え! 大変。でも、ママもパパも、お酒飲みにいっちゃった。どうしようね、みゆ」
どうせ、ディナーにでもいったのだろう。
私がいないとなると、すぐに二人でお出かけしようとする。今日くらいは、家でゆっくりしていてほしかった。
どうしようね、と、電話の向こうでママも焦りだしてしまう。
パパに伝わったら、もっと大変なことになることは目に見えているから、和泉しゅうにちらりとアイコンタクトを送る。
やっぱり、お願いしてもいい? という気持ちを込めた。この場合は、やっぱり、本当に仕方がないのだと思う。
和泉しゅうは、私の意図していることが分かったのか、頷いてくれた。
「ママ、あのね、お友達のいとこのお家に泊めてもらえるかもしれないんだけど」
「お友達? 男の子? 女の子?」
「今はそんなことどうでもいいでしょ。女の子だよ」
なんとなく、嘘をついた。
やましいことなんてないはずなのに、やましいような気がしてきてしまう。