可愛くないから、キミがいい【完】
「……あの人のこと、ちぃ君ってみゆは呼んでたんだけど、結局、みゆのこと振った後、すぐにちぃ君は、幼なじみの女と付き合い始めた。その幼なじみがこの前の学祭で、ちぃ君と一緒にいた女だよ。みゆは、二人が幼なじみだって知っていたけど、別にそんなことは関係ないはずだった。ちぃ君は、顔がかっこよかったし、背も高いし、みゆの隣にいても恥ずかしくないし、クールなところも素敵だなと思ったから、みゆの方から頑張って近づいて付き合うことになったけど、……最初から、ちぃ君は、その幼なじみのことが好きで。……みゆのほうが、何百倍も可愛いはずなのに、みゆのことを振って、その幼なじみをちぃ君は選んだ」
「へえ。そういう感じだったのな」
「……でも、知ってた、本当は。ちぃ君は最初から、ずっとその幼なじみのことを気にしていて、ずっと、みゆと付き合ってるときも、ずっと、気にしていて。だから、最初から、みゆは、代わりだったんだと思う。可愛いって聞いたら、可愛いって言ってくれたし、デートもしてくれたし、触れてもくれたけど、みゆは、みゆとして、大切にされてなかったと思う。だから、本当に、やっぱり、和泉くんが言った通りだよ。みゆは、可哀想なの。ずっと、蚊帳の外だった。……ほんとうに、ムカつく。どうして、可愛いのに、可哀想になっちゃうんだろうって思ってる。こんなこと、今、和泉くんに話してる自分にも、すごくムカついてる」
「別に、話したいなら話せばいいだろ。俺に話す自分くらい許してやれよ」
「……うるさい、し。偉そうにしないでよ。ホラーも見れないくせに」
「それ関係ねーだろ。今は、俺、お前の喧嘩買ってやらねーからな」
「………、」
「……で、続きは?」
横からかなり真っすぐな視線を感じた。
きっと今の私は変な顔をしてしまっていると思ったから、どうしてもそれを和泉しゅうに見られたくなくなって、背を向ける。
そのほうが、話しやすいこともあるのか、また言葉は自分の内側からするりと出ていってしまう。