可愛くないから、キミがいい【完】





涙を止めたくて、瞼を閉じる。

だけど、全然、止まらない。




「そっか。いっぱい傷ついたんだな、お前」


そうだよ、私は、
本当に、本当に、傷ついたんだよ。


でも、ずっと、うまく痛むことができなかった。

ちゃんと傷つくことを、
自分に許したくなかった。


和泉しゅうのせいで、可愛くいるために犠牲にしてきた自分のこころの奥を、今、見つめている。



「………泣いてんの?」

「……っ、泣いて、ないし」

「ははっ、泣いてるだろ」

「違うっ、泣いてない。今更のことで、泣かない」

「今更でも、なんでも、泣きたいときに泣けばいいだろ」



ムカつく。和泉しゅうのくせに。

はる兄さんのシーツに顔を押し付けて涙を拭く。


未だかつて、こんなに下手くそな泣き方をしたことはない。可愛くもない。意味が分からない。

でも、本当に止まらない。




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