可愛くないから、キミがいい【完】




私は、今、どういう状況にあるんだろう。

考えて、はじめに頭に浮かんだのは、さっき思い浮かべないようにしていた和泉しゅうで。



結局、デートをしてはる兄さんの部屋に二人で泊まることになった日の翌朝は、これといって何も起きなかった。


一晩経っても和泉しゅうはムカつくことばかり言ってきたけれど、キスしてしまったことや「そばにいてもいいよ」なんて言ってしまったことを改めて考えたら、胸がむずむずして仕方なくて、あんまり調子よく、和泉しゅうのムカつく発言に言い返すことが出来なかった気がする。



昼前に部屋へ戻って来たはる兄さんは、終始ニヤニヤしていたけれど、もう、色々なことを訂正するほうが面倒だった。

その点に関しては和泉しゅうとも意見が一致したので二人で適当に受け流すことにした。



和泉しゅうは、私の最寄り駅までついてきたくせに、最後まで見送ることもなく、『またな』とすぐに去っていった。

またな、じゃないし、と思いながらも、結局、なぜか、私のほうが和泉しゅうの後ろ姿を見送ってしまっていた。



本当に、変だ。むずむずする。




「おーい、みゆ?」


マユに呼ばれて、意識を現実に戻す。

私らしくない微妙な表情を浮かべてしまっていたかもしれない。


うーん、と唇をとがらせて、
可愛くみえるような顔に戻す。


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