可愛くないから、キミがいい【完】
和泉しゅうは、少しだけ驚いたような表情を浮かべて、そのあと、目じりに皺をよせて嬉しそうに笑った。
「俺、その曲本当に好きだから、なんかびっくりした」
「………ふぅん。みゆのほうが好きだけど」
「いや、俺の方が絶対好きなのな」
「じゃあ、仕方ないし、みゆとおんなじくらい好きってことでもいいよ」
「それは、納得いかねえわ」
そう言いながらも、和泉しゅうが、
タブレットを操作して曲をいれてくれる。
はい、とマイクを渡されて、受け取った。
ゆったりとしたテンポの歌い出しで声が重なって、むずむずする。
和泉しゅうと一緒に歌うのは、予想以上に楽しくて、一曲があっという間だった。
歌っている途中で何度か目が合って、そのたびに、ほんの少しだけ和泉しゅうが口角をあげてくるから、わたしはなぜか、そのたびに、嫌な顔をしてしまった。
パパがママにプロポーズしたときに流れていた曲が、今日をもって、和泉しゅうと一緒にカラオケで歌った曲に変わってしまった。