可愛くないから、キミがいい【完】






じっと見つめられて、
目を逸らさずに、見つめ返す。

す、と和泉しゅうの手がわたしの方に伸びてきて、指が耳の裏に触れた。そのまま、ゆっくりと顔が近づいてくる。


あ、と思ったときには、全部過去になっている。




目を閉じようか、閉じないでおこうか迷って、


「…………っ、」


結局、閉じなかった。





じっと、目を合わせたまま、キスをする。

焦点もちゃんと定まらないのに、
見つめ合っていると思えるのは、不思議だ。



唇を味わうように啄まれて、
胸がぎゅうっと痛くなる。


耳朶を、親指で撫でられて、背骨が震えた。


何度か角度を変えて合わせられて、唇をゆっくりと開いたら、その瞬間、ほんの少しだけ、唇を離された。


思わず眉をひそめてしまう。

そうしたら、至近距離で、和泉しゅうが意地悪く口角を微かにあげた。



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