可愛くないから、キミがいい【完】
「…………なんなの」
「どっちの、なんなの?」
「また、魔が差したとか言うわけ?」
「アホか。なわけないだろ」
「………ふぅん」
「したいから、してる」
「……ココア臭いんですけど」
「お前は、烏龍茶くさいけどな」
「…………じゃあ、もう絶対、しない」
ふ、と笑った和泉しゅうの息が、肌に触れた。
うそ、と和泉しゅうの口が動く。
「なんか甘いし、口開けろよ」
偉そうだから、いやだ。
そう思っている間に、また、唇を合わせられた。
そのまま、深まってゆく口づけに、
ぎゅっと和泉しゅうの制服の裾を掴んでしまう。
がむしゃらにむさぼるようなものでもなく、かといって弱々しいものでもなく、確かに求められているのだと分かるくらいの強引さで、和泉しゅうは私の唇に触れる。
彼の指に撫でられている耳も、熱をもっていた。
和泉しゅうの体温がきっと伝染っただけだ。
時折、響くリップ音が、鼓膜を甘く壊していく。