可愛くないから、キミがいい【完】
本当に、和泉しゅうの考えていることが、
分からなくて、それだけは、とても嫌だ。
そんな中でも、今まで味わったことのない、不本意な幸福が自分のなかで、大きくなっていて。
他の男の子たちのように、可愛い女の子として接してくれない。だけど、文句を言うのも、本当に好きなものを言うのも、和泉しゅう相手だったら、怖くない。
傷つけられることはない、と、
少しずつ、信じてきている自分がいた。
だけど、そうなのだ。
和泉しゅうといるときの私は、イレギュラーな状態であり、結局、本当の私は、可愛いのに、可愛い“だけで”、それが全てだと思ってずっと生きてきたのだから。
可愛くいる自分を肯定してくれない相手なんかと―――可愛くない自分ばかりを見せていた和泉しゅうなんかと、
幸せになれるはずは、なかったのだ。
そんな、底に落とされるような現実を突き付けられたのは、空が憎いほど綺麗に染まっていた、ある夕方のことだった。