可愛くないから、キミがいい【完】
7.堕天使ディストピア
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和泉しゅうからの誘いのメッセージもなく、
久しぶりに家でのんびりするはずだった放課後。
マユとミーナと話しながら帰る準備をしていたら、上機嫌のなほちんが教室に入ってきた。
なほちんが上機嫌なときは、男の子絡みか、食べ物のことで何か嬉しいことがあったときのどちらかである。
今日はどっちだろうと思いながら、「なほちん、どうしたの?」と声をかけたら、なほちんは高くあげた手を左右に揺らした。
なほちんの手には、四枚の長方形の紙が握られていて、それが、ひらひらと横に揺れる。ドーナツのイラストがちらっと見えた。
どうやら、後者のようだ。
「同じクラスの寺田に、ドーナツ屋の割引券もらっちゃった」
「ええ、寺田君?」
「そう! バイト先の女の子からもらったらしいんだけど、ドーナツ嫌いらしい!で、隣の席の私にまわってきたというわけよ」
「絶対その女、寺田に気あるじゃーん」
ミーナがリュックをかついで、ニヤッとする。
確かに、気があるのかもしれないけれど、ドーナツの割引券で気を引くなんて、たぶん恋愛偏差値は低めなんだろうなあと分析しながら、私も頷いた。