可愛くないから、キミがいい【完】
「今はそれどうでもいいんだってば。四人でいこうよー」
「なほちん四枚使わなくてもいいの? なほちんなら、あっという間にドーナツ10個くらい食べられそうだけど」
「マユ、ハブにするよ?」
「ごめんごめん、うそ。行きたい」
「みゆも、今日は予定ないから、行きたいなあ」
「ええ、珍しい。みゆもフリーなんだ」
「わたしも、今日は、トシ君と約束ないから、ドーナツ食べたーい」
「ミーナは、色んな意味で、ハブにしたい」
「うそうそ、なほちん、顔怖いって。誘ってくれてありがとね」
帰り支度を済ませて、四人で教室を出る。
ドーナツは好きだ。
友達と放課後を過ごせることも、素直にうれしかった。そもそも、最近は、和泉しゅうばっかりだったから、和泉しゅう以外のひとと放課後を過ごすこと自体、久しぶりで、わくわくする。
ドーナツ屋さんは、高校の最寄駅のすぐ近くにあった。
なほちんが寺田君にもらったという割引券のおかげで、一人二個ドーナツを注文したけれど、合計で500円ほどしかかからなかった。かなりお得だ。
寺田君に割引券をあげた女の子は、まさか私たちの放課後の幸福のお手伝いをしたとは夢にも思っていないだろう。
少し寒かったけれど、店内が混みあっていたので、屋上テラスで食べることにする。
「めちゃくちゃ、ドーナツ日和じゃん」
なほちんの言葉に、みんなで空をみあげた。
ドーナツ日和なのかどうかは分からないけれど、確かに、あたり一面すっかりとオレンジ色に染まっていて、とても綺麗だった。