可愛くないから、キミがいい【完】
あの男は、私が、わあ、夕焼け綺麗だね、って可愛く言ったら、ほんとに思ってんのかよ、と嫌味を言ってくるだろうけど。
みゆは夕焼けが好きなの、と可愛くなく言ったら、俺も好き、とかなんとか言って、小さく笑うのだろう。
会っていないときくらい、和泉しゅうのことは忘れていればいいのに、気を抜くと考えてしまってどうしようもない。
「四人で写真撮る?」
「いいねえ、撮りたい。みゆの携帯で撮るね」
携帯のカメラを起動させて、可愛いフィルターで写真を何枚か撮る。
それをすぐに三人に送ってから、SNSに投稿した。
携帯を閉じる前に、一度メッセージアプリを確認したら、和泉しゅうから〈明後日、ひま?〉と連絡がきていた。
相変わらず、絵文字も何もない、ぶっきらぼうなもの。
おそらく予定は入っていないはずだけど、見てすぐに返信するのは癪だ。
家に帰ってから返信することにして、携帯をしまう。
それからは、ドーナツを食べながら、夕暮れの下、四人で思い思いに話した。
気心の知れた女の子が複数集まると、自然と、話題は、悪口と恋愛の話に移ってゆく。なほちんとマユは結構、他人に対して不満がたまっていたみたいで、口の周りにドーナツの砂糖をつけながらぷんぷん怒っていた。