可愛くないから、キミがいい【完】
一通り、不満を零し終えたら、みんな満足したのか、恋の話に変わっていった。
「トシ君、いままでで一番、相性がいいかも」
「え、なにそれは、身体のこと?」
「なほちん、違いますー。まあ、それもあるけど、かっこいいし、性格が合うんだよね」
意外にも切ない恋愛映画で泣くタイプで可愛かった、とか、えっちのときはちょっと意地悪になるとか、ミーナの惚気を散々聞いて、ウンザリしてきた頃に、「私は、まだ保留にしているんだよね」とマユが微妙な顔をして言った。
「コウタくん? 前も言ってたよね。まだ、保留中なんだ」
「うん、会ってはいるんだけど。もう一回告白されたら、オッケーしようかなあって」
さっき悪口を言っていたときとは全然違う、照れたような表情で目を伏せたマユ。口の端にはまだ砂糖がついていたけど、なんだか面白くて、指摘しないことにした。
そんなマユに対して、「そんな風に余裕かましてると、他の女にとられちゃうよ」となほちんが強めのアドバイスをする。
確かにそうだ。
略奪は、余裕があっても余裕がなくても、平気で起こる。
たぶん、このことに関しての危機感は実際に体験した人じゃないと分からないんだと思う。
マユは「それはやだなあ」とのんびり笑って、あんまり本気にしていないみたいだったので、ちょっと呆れてしまう。