可愛くないから、キミがいい【完】
それ以上、マユは何も言いたがらなかったから、なほちんが自分の恋事情について話し出した。
とも君とは、遊びに行ったりしているみたいだけれど、恋愛感情を抱いているかどうかは微妙なところであるらしい。好きだけど、恋じゃない。彼氏は欲しいけれど、そういう相手と付き合うのはちょっと違うのではないかと真剣に言っていた。
どうでもいい相手なら、きっとなほちんも付き合っているはずで、とも君だから迷うのだろう。
なほちんは、とも君のことをけっこう大切に思っているのだと思う。
「恋って、結構、難しいよね」
なほちんの言葉に、今は、心から頷けてしまう。
難しいというより、不可抗力で落ちてしまう、どうしようもないもの。
ほら、こんなときにも、和泉しゅうの顔が頭に浮かぶ。
目つきの悪い、ムカつく笑い顔。
ドーナツを食べるくらい簡単に、色々なことが自分の思うままに進めばいいのだけど、現実はそういうわけにはいかない。
それだからこそ、うっかり手繰り寄せてしまった幸福感もあるのだけど、なんて思いながら、ドーナツを頬張っていたら、「みゆは、どうなの?」と三人の視線がいっぺんに私へ向いた。
ミーナの惚気、マユとなほちんの現状、ときたら、次は私なのだと分かっていた。
食べかけのドーナツをお皿に戻す。