可愛くないから、キミがいい【完】
「忘れるわけないじゃん、あんなかっこいいひと。顔面偏差値えぐかったよね。ていうか、その後も普通に学祭で会ったじゃんか。こっちの学祭にもきてたし。トシ君との話題にもときたまあがるよ。あの二人、バイト先同じだし」
「本当に、かっこよかったよね。ちょっと怖かったけど、パフェ食べてた気がする。和泉くん、元気なのかな? そういえば、みゆ、仲良かったんじゃん?」
「ええ、そんなことないよ」
咄嗟に首を横に振った。
平常心、をなんとか装っているものの、ほんの少しだけ、ドキドキしてしまう。
本当は、そんなこと、ある。和泉しゅうは、元気だよ。ムカつくくらい、元気で、相変わらず、甘いものを食べてるよ、と得意げに言いたくもあったけれど、彼女でもないのに、うまく言える気がしない。
和泉しゅうとは、一昨日会ったばかりだ。
クレープを食べに行ってから、駅の近くの公園で話した。暗くなってから、キスをした。寒いといって、ぎゅうもされた。
思い出したら、鳩尾のあたりが、きゅうと縮む。
一昨日も、私は、和泉しゅうのことが好きだと思ってしまっていた。
その男がどうしたというのだろう。
「和泉くんのことで、何かあるの?」
別にそこまで気にしているわけでもない、という態度で、首を傾げる。