可愛くないから、キミがいい【完】



「今日、どうしような。甘いもの食べに行く? みゆ、好きでしょ」


学校から駅の方へ歩きながら、唯人君に尋ねられる。


うーん、と、首を傾げたら、手をすくわれて繋がれた。

熱いのに、さらさらとしている手。こうやって、和泉しゅう以外の男の人の感触を重ねていって、思い出せなくなればいいのだと思いながら、ぎゅっと握り返す。



甘いものを、食べたい気分ではなかった。

未練なんてないはずだし、終わりは引きずらないと決めたけれど、放課後に甘いものを食べに行ったら、和泉しゅうとの記憶をいやでも手繰り寄せてしまう気がしていた。


唯人君にむかって、首を横に振る。
それから、ちら、と上目づかいで彼を見上げた。


「みゆ、ちょっとしょっぱいものが食べたいかも、です」

「本当? 珍しいね。みゆといえば甘いものって感じなのに」



私といえば、甘いもの。

その方程式をつくって、満たされているのはどちらかというと私ではなく唯人君だと思うけれど、唯人君は私の望むように私を見てくれているし、私は唯人君が望む私という存在でいる。


「たこ焼き、半分こしませんか? 駅前に新しくできたから、みゆ、唯人君といきたいなあ」

「いいね。いこっか」


繋がれた手の間では、あたらしい熱が生まれる。

それは、どうしてかうまく肌に馴染んでくれなかったけれど、気にせずに唯人君の隣を歩いた。




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