可愛くないから、キミがいい【完】
「それだけって、すごいデカい気持ちなんだけど。みゆより、惹かれる女の子がいない」
それは、言い換えれば、私よりも自分の望むような可愛いを提供してくれる、自分のときめきに都合のいい女の子がいないということじゃないのだろうか。
みんなそうやって、自分にとって気持ちのいい存在を求めている。自分の欲求を満たしてくれるような、存在を。私も、そうだ。
本当に、それがすべてだったのに。
どうして、自分が、今、こんなにも捻くれた考えを持ってしまっているのか分からなかった。だけど、人の体温ではどうにも埋められないような寂しさが心の片隅で生まれていた。
それでも、ぎゅっと、唯人君の服の袖をつかんで、無理矢理、可愛く口角をあげる。
「みゆに、そんなに惹かれてくれてるんですね?」
「うん。だから、お姫様、そろそろキスさせてくれませんか?」
こくん、と頷いて、目を閉じる。
唯人君の熱が、すぐに唇におりてきた。