可愛くないから、キミがいい【完】
それを受け入れようと、唇を開きかける。
だけど、すんでのところで、とん、と唯人君の胸を押してしまって。
「……………っ、」
唯人君の唇は、あっさりと離れていった。
心配そうな表情で、顔をのぞきこまれる。
キスやそれ以上の行為をするために、唯人君の部屋に来たはずで、それをたった今まで受け入れていたのに、どうして今、彼のことを、拒んでしまったのか自分でも分からなかった。
ただ、どうしても。
「………ごめんなさい。今日は、ちょっとそういう気分になれない、かも」
申し訳なさそうな表情をつくる。
唯人君は、大げさにガッカリしたような顔を私に見せることもなく、ちょっと困ったように目を細めて、「分かったよ」と優しく頭を撫でてくれた。
そういうところが、やっぱり同世代の男の子より大人だと感じる。私が、失望するような余裕のなさを感じさせることはない。
やっぱり、もう、唯人君でいいんじゃないだろうか。
追いかけたくなるような何かは足りていないけれど、間違いなく、彼は、私を一番に思ってくれている。裏切らないと、思う。この人の前だったら、ずっと、私は可愛い天使でいられる。
「みゆ」
「うん?」
「今日はもう、そういうことはしないけど。さっき、みゆの方から色々と聞いてくれたから、ちゃんと言わせて」
「……う、ん」
顔をのぞきこまれたまま、じっと見つめられている。
魔が差すような、そういった温度でもなく、唯人君の目は真剣そのものだった。