可愛くないから、キミがいい【完】
マユがいなくなって、帰る準備を再開する。
今日も、唯人君と会うことになっていた。
学校まで迎えにきてくれるようなので、連絡を待っている状態だ。
鞄に持ち帰る物を全部詰め終わって、コンパクトミラーを見ながら、ゆるく巻いた髪を整えていたら、スカートのポケットの中で、携帯が震える。
確認したら、唯人君からのメッセージだった。
時間を置くことなく、既読をつける。
〈ついたよ〉の言葉と、トラの可愛いスタンプだ。そのメッセージに〈ありがとうございます。いま行きますね〉という言葉と、可愛い女の子が笑っているスタンプを送り返した。
白いもこもこのマフラーを巻いて、
前髪だけ横へ流してから、立ち上がる。
生徒玄関を出たら、
すぐに、唯人君の姿を発見した。
いつも下校時間になると校門のところにいるはずの先生が今日は偶然にもいなくて、注意を受けることもなかったのか、彼は校門の中にいた。
不審者に思われるような見てくれではないけれど、ルックスもスタイルもよくて、おまけにスーツの唯人君は、違う意味でかなり目立っていた。
あの人かっこいいね、と小声で言い合う女の子たちの声もちらほら聞こえてくる。
彼のそばを通り過ぎて帰る生徒も、なんだか身体を強ばらせているように見えた。
たぶん、唯人君のかっこよさに緊張しているんだと思う。
あの男の人は、私と約束をしていて、私のことを待っている。もっといえば、私のことが好きなのだ。
そんなことを思いながら、優越感を抱いてしまう。