可愛くないから、キミがいい【完】
周りの目なんてどうでもいいんだと思ってたし、だからこそ、他人のことなんて何にも考えずに好き勝手生きているのだと、和泉しゅうのことをとらえていた。
彼がそういう類の罪悪感を抱くだなんて信じられなかった。関わった人に対して、誠実になれないことに申し訳なさを感じて、自分なりに罪滅ぼしをしようとするような人だったなんて。
それだけど、私、女だから分かる。
そういう中途半端な態度が、一番傷つくのだ。
だから、和泉しゅうは、
ダサいというより、ずるくて、最低だ。
そう思ったけれど言わずにいたら、
また、和泉しゅうが口を開いた。
「広野だけだったんだよ」
「………なに、が」
「自分から、遊びに誘ったのも、放課後会いたいって思ったのも。連絡取れなくなって、完全に避けられてるのに、学校まで行くとか気持ち悪いことしたのもな。他の女に対して、いいなと思ったことはあるけど、全部そこで終わる程度のものだった。自分から、好きになったのはお前だけ」
「……………、っ、」
「こんなこと、自分が誰かに言うことになるなんて思わなかったわ。でも言わないで、こんなことになるんだったら、さっさと言えばよかった。いつの間にか、馬鹿みたいに、お前のこと、好きになってた」
本当に何を言ってるの、和泉しゅうは。
はじまりは最悪だった。それからも最悪がいっぱい重なって、だけど、気づいたら、最悪じゃなくなって、好きになってしまっていた。
和泉しゅうも、
もしかしたら、そうだったのだろうか。
そんなわけない、とは、
もう思い込むことができなかった。
言葉にしないと分からないことばっかりだ。
言葉にしても分からないことがある。
だけど、瞳の温度は嘘をつかない。
この男は、いま、本当のことを、言っている。
それを疑うには、
あまりにも軽薄さが足りていなかった。