可愛くないから、キミがいい【完】





「………みゆ、だけ?」

「うん」

「……みゆと付き合ってるつもりだったの?」

「うん」

「みゆは、文句ばっかり言ってたのに?大嫌いっていっぱい言ったのに?」

「うん」

「………みゆ、全然、可愛くいなかったのに、本当に、みゆだけが、特別だった?」

「うん」




また、視界が滲みだす。


一度泣いてしまえば、涙腺はゆるゆるで、簡単に溢れ出してしまう。ぽたぽたと、しゃがみこんで抱えたスカートの上に涙が落ちていく。

和泉しゅうが、
はは、と目つきの悪い目を細めて笑った。



「なんで、そんなに泣くんだよ」

「……傷、ついた、から」



言わないでおこうと思ったのに、
結局、言ってしまう。

隠しておくべき弱さを、この男の前では、簡単に晒せてしまう。それが、どういうことなのか、分かっている。

天使じゃない。可愛くない。私らしくない。でも、この、どうしようもない部分も確かな私の一部で、それを和泉しゅうは、拒もうとしない。



「なにが」

「っ、……分かん、ない」

「すげー、泣き顔」

「うる、さい、」

「まあ、どんなんでもいーけど別に」






< 312 / 368 >

この作品をシェア

pagetop