可愛くないから、キミがいい【完】
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広野みゆが学校の前で怒り狂っていた、なんて、あまりにも不名誉な噂が、和泉しゅうと怒りをぶつけあった次の日から学校で流れ始め、それは、三日ではおさまらず、しばらく消えなかった。
そのせいで、告白される回数も、
廊下で声をかけられる回数も減ってしまった。
だけど、いい。
どうせ、断らないといけないのだし、その程度でなくなるような気持ちならいらないと、ポジティブに考えることにした。
相変わらず、和泉しゅうの前以外では、可愛い天使な自分でいる。
この私も、私にとっては、本当に大切なのだ。
可愛いは、誰が何と言おうと、私の中では、正義だし、ほとんどすべてだ。だけど、可愛くないが、正義じゃないというわけではないのかもしれない。
和泉しゅうのせいで、世界の見方がほんの少しだけ、変わりつつある。
あれから、唯人君とも、電話で一度だけ話した。
しっかりと謝って、「唯人君とは、付き合えない」とはっきり言った。彼は、そうなることが分かっていたみたいだった。
『あんなにみゆのことを怒らせることができる相手はみゆにとって本当に特別なんだろうなって思った』と、淋しい声で笑った後、『もう、みゆとは会わない』と言われた。
私も、言おうと思っていたことだった。
なんだかんだ、やっぱり唯人君は、他の男の子よりも特別だったような気がするけれど、もう会えないと思っても、胸を苦しくさせるような寂しさを抱くことはなかった。
『本当の意味で、ようやくみゆのこと吹っ切れそう。元気でね、みゆ』と、彼は最後の最後まで、ただただ優しかった。