可愛くないから、キミがいい【完】
「いま、ひま?」
大学生っぽい人が二人、私を囲むようにして立っている。
ねえ、の声を聞いた瞬間、なんとなく、ナンパだろうな察してはいたけれど、案の定、ナンパだった。
上目遣いをして、困ったように、ほんの少しだけ口角を上げる。
「ひまなら、遊びに行かない?」
「……えっと、」
ファッションセンスも微妙だし、ルックスもタイプでもない。そういう相手からのナンパは、ただただウンザリしてしまう。
だけど、ちょうどいいかも、と、悪いことを、ひらめいた。
私がどれくらいモテるのか、和泉しゅうに、分からせるチャンスかもしれない。
ナンパされているのを見たら、流石に和泉しゅうでも焦るのではないだろうか。
そう思いながら、すぐには断らないで、曖昧な言葉ばかりを返して対応する。
「カラオケいく?おにーさんたち割とうまいよ」
「そうなんですね? へへ、それは聞きたいかもなんですけど」
「ダーツでもいいよ」
「うーん、どうしよう、」
和泉しゅうは、いつくるのだろう。
そいつ、俺の彼女なんで、の声はまだ?
なかなか来ない和泉しゅうに、じれったい気持ちになりながら、二人組の隙間から、辺りを確認してみる。
そうしたら、少し離れたところで、意地悪く口角をあげてこちらを見ている和泉しゅうが立っていたから、驚いた。