可愛くないから、キミがいい【完】
いつから、いたのだろう。
今、来た感じではない。
そして、どうやら、
こちらに来て、私を助けるつもりはないらしい。
今日も今日とて、やはり、和泉しゅうは最悪だ。
ナンパ二人組に気づかれないように、一瞬だけ和泉しゅうを睨んだら、その口が、楽しそうに動いた。
遠くからでも分かった。
“倒せる敵は自分で倒せ”と言ったのだ。
私の彼氏になったというのに、本当に、どうしようもない。どれくらいモテるか分からせたところで、響いていないし、何にも焦ってない様子だ。
そのことにムカついて、すっかり白けた気持ちになってしまったので、「すみません。彼氏がいるので、遊びにはいけないんです」と、上目で申し訳なさそうな顔をつくり、可愛く言ってから、二人の間をすり抜ける。
背中の方で、俺らと遊ぶ方が楽しいって~、どこにいんの? なんて、色々と言っていたけれど、無視して、和泉しゅうのところへ向かった。
彼の目の前で立ち止まり、周りにばれないようにして、思いっきりムッとした表情を作る。
「助けるとかできないわけ?」
「あれくらいなら、自分で倒せるだろ」
「そういうことじゃなくて!………ヤキモチとか焼かないの?って聞いてるんですけど」
「嫉妬する時はするけど、今のは全然」
「……ふぅん」
じゃあ、いつ、和泉しゅうは、嫉妬するんだろう。まだ、知らない。嫉妬したら、どうなるんだろう。いつか、知りたい、かもしれない。