可愛くないから、キミがいい【完】

駅につくと、改札をぬけてすぐのところで、広野はすでに待っていた。


今日は誰にも絡まれている様子がなく、携帯に目線を落としている。はじめて会った時から変わらない胡散臭いオーラをまとってはいるけれど。


まわりにどう見られているか、どう見られたいか、ずっとそんなことばかりを意識しているのだともう分かっている。

俺には理解できないけれど、理解できないことがあってもいい。


すべてを納得しようとは思わないし、自分には分からないことを分からないまま、大切にしたいなんて、馬鹿みたいなことを思っている。


近づくと、広野は、ちら、と顔をあげかけたけれど、そのまま一時停止して、すぐに携帯に目線を戻してしまった。


俺がきたと気づいたはずだ。

だけど、気づいていないふりをすることにしたのだろう。


別に、自分の好きな態度でいてくれてもいいですけど。

気づいたなら、顔くらいあげろよ、とは思う。