可愛くないから、キミがいい【完】
ぴゅー、と突然あたった空気に、前髪がふわりと浮く。
思わず感じた生温い風に驚いて目を開ければ、未だ至近距離にある顔が、意地悪く歪んでいた。
息を前髪に吹きかけてきたのは、和泉君?
は?と思った次の瞬間に、彼の薄い唇がひらく。
「しねーよ。ばーか」
予想外の出来事に、取り繕うことも忘れて目を見開いてしまった。
和泉君が、私から顔を遠ざける。
まとう雰囲気に甘ったるさなんてひとつもない。
「携帯忘れておけば、俺が渡しにきてくれると思った?」
「え、」
「つーか、生クリームもわざとだろ。もう言うけどさ、全てが胡散臭い」
「和泉君?」
「全員が全員だませるとおもったら大間違いなんだよ。どーせ、どうしたら男落とせるか、とかそういうことばっかり考えてるだろ」
一体、この人は、何を言っているんだろう。
辛うじて上目遣いで首をかしげたら、ゲンナリした表情で屈んで私と目線の高さをあわせてきた。
ひゅるり、と冷たい風が吹く。
「───お前、計算してるのバレバレだから」
性格悪く片方の口角だけあげて、最後に、な?と微かに首をかしげてきた。