可愛くないから、キミがいい【完】
その仕草に、もうときめきはしなかった。
────『計算してるのバレバレだから』?
どういうことだ。どうして、バレているの?
焦りに襲われる。
くらりと目眩がした。
「胡散臭いのも、相手の気を引くためにわざとらしいことするのも、白けんだよ」
何だ、この人。本当に、いやだ。
段々と和泉君に何を言われているのか、理解できるようになってくる。
彼はつまり、私の仕掛けた罠も恋に落とすための計算づくしの可愛さにも、全部気づいていて、その上で、白けるって言っているのだろうか。
「(……………何様、なの?)」
彼に対してかっこいいと思っていた気持ちが、すーっと次第に消えていく。今の私の心を占めているのは、完全に怒り、だった。
どタイプのイケメンだからって、何でも許されるわけじゃない。
パニック寸前の頭で、必死に考えをめぐらす。
「言っとくけど、俺はナシだから。お前のこと」
「…………、」
「まあ、今日は、楽しかったけどな。いろんな意味で」
「……………」
「ポテトもパフェも食べられたし」
頭が熱くなっていた。
和泉君に計算してることがばれたことも、ナシだって言われたことも、今、彼が取り繕った表情もできない私の前で余裕たっぷりな表情を浮かべていることも。
全部、全部、許せない。本当に、何様だ。
「つーか、カラオケでめちゃくちゃ喋ってたくせに、急に黙んなよ」
「……」
「お得意のスマイル忘れてんぞ」
おい、と顔をのぞきこまれる。
そこで、今まで必死で我慢していたのに、あまりの苛立ちに、プチン、と自分の中で何かが切れてしまった。