可愛くないから、キミがいい【完】
「一生、その溝にいろ。ばぁーーーーーーーーか!顔以外ゴミ男が!!!」
めいいっぱい叫んでやる。
近所迷惑なんてそんなものは知らない。
言い終えてから一度も彼の顔を見ることなく、私は、すぐに体の向きを変えて、駆け足で駅に向かった。
ムカつく。ムカつく。ムカつく!
走りながらも、イライラはおさまらない。
眼鏡をかけた盛った猿より、和泉しゅうのほうが何億倍も最低だった。イケメンのくせに、あんな最低なやつだったなんて。
宝の持ち腐れだ。天使な演技も、恋を実らせるための罠も見破って、私のことを馬鹿にした。
いくら顔以外どうでもいいって言ったって、あんなやつは絶対に無理だ。お断り。
顔以外、世界ランキング最下位。
この世界で一番、無理。
本当に、信じられない。
「……くそやろう」
誰にもばれないように暗い道で小さくつぶやく。
泣きたいし叫びたいし怒りたい。まるで、今の私は、天使とは対極にいる悪魔みたいだ。
走りながら、カラオケの時に頑張って交換した連絡先も消しておいた。
もう一生、会わないつもりだ。
本性もばれてしまったのだから、絶対に会いたくない。
今日だって、こんなことになるのなら参加しなければよかった。そうしたら、私は誰の目にも完璧な天使でいられたのに。
天使じゃない自分なんて、できれば、一生誰にもばれたくなんてなかったのに。
絶対に、あいつには今世では死ぬまで会わない。
そう決心して、電車に乗り込んだけれど、その日はずっと気持ちが晴れることはなかった。
――――本当に、和泉しゅうは、最悪だ。