可愛くないから、キミがいい【完】





トイレの鏡で、顔のチェックをして髪型を整える。


今日はハーフアップにした。

可愛い。可愛いんだよ。計算していても、可愛かったら、いい。ほとんどの男の子は、可愛かったら、白けないの。白けるやつは、ゴミなのだ。


自分が写る鏡をじっと見つめる。

少しだけたれているぱっちりとした二重の目も、長い睫毛も、ぷるんとなった唇も、我ながら他の女の子の何倍も可愛いと思ってるし、実際にそうだ。

スタイルだっていいし、胸もくびれも完璧だと思う。外見のコンプレックスなんて、ほとんどない。


ナルシストとは少し違う。

だって、現実以上のフィルターを自分にはかけていない。



可愛い。

可愛いだけ。

“だけ”のことくらい、十分、分かっている。






――――『お前、計算してるのバレバレだから』


うるさい。それの何が悪いの? 頭の中からさっさと出てってよ、ゴミ男―――なんて、心の中で、悪態をつきつつ、誰もいないことをいいことに自分の顔を堪能して、ようやく憂鬱が少し晴れたところで教室にもどることにする。


背筋を伸ばして歩く。

ちらちらと感じる好奇の視線も、甘んじてちょうだいする。


そのまま何事もなく、自分の教室に入るつもりだったのに、どこかの女の子が呟いた声が耳に入ってきて、心臓はまた気持ち悪く、とくん、と跳ねた。




< 41 / 368 >

この作品をシェア

pagetop