可愛くないから、キミがいい【完】
トイレの鏡で、顔のチェックをして髪型を整える。
今日はハーフアップにした。
可愛い。可愛いんだよ。計算していても、可愛かったら、いい。ほとんどの男の子は、可愛かったら、白けないの。白けるやつは、ゴミなのだ。
自分が写る鏡をじっと見つめる。
少しだけたれているぱっちりとした二重の目も、長い睫毛も、ぷるんとなった唇も、我ながら他の女の子の何倍も可愛いと思ってるし、実際にそうだ。
スタイルだっていいし、胸もくびれも完璧だと思う。外見のコンプレックスなんて、ほとんどない。
ナルシストとは少し違う。
だって、現実以上のフィルターを自分にはかけていない。
可愛い。
可愛いだけ。
“だけ”のことくらい、十分、分かっている。
――――『お前、計算してるのバレバレだから』
うるさい。それの何が悪いの? 頭の中からさっさと出てってよ、ゴミ男―――なんて、心の中で、悪態をつきつつ、誰もいないことをいいことに自分の顔を堪能して、ようやく憂鬱が少し晴れたところで教室にもどることにする。
背筋を伸ばして歩く。
ちらちらと感じる好奇の視線も、甘んじてちょうだいする。
そのまま何事もなく、自分の教室に入るつもりだったのに、どこかの女の子が呟いた声が耳に入ってきて、心臓はまた気持ち悪く、とくん、と跳ねた。