可愛くないから、キミがいい【完】
唯人君が自分のと一緒に頼んでくれて、すぐに店員さんがやってくる。
アールグレイの紅茶とショートケーキが二つテーブルに置かれた。
ケーキと紅茶をきれいに並べて、盛れるフィルターで写真を撮る。
それから、食べている唯人君のことも撮っておいた。
男の子って、写真を撮られるのはあんまり好きじゃないって聞くけど、可愛い女の子のカメラロールに入ることはまんざらでもないでしょう?
そういうのは、ちゃんとわかっている。
「顔から下はいっちゃってるけど、SNSに今日のカフェのこと載せてもいい?」
「みゆ、俺の写真載せてくれるんだ?うれしい」
「みゆが唯人君のこと、載せたいから載せるんですよ?」
あ、照れた。
わざと敬語とため口をごちゃまぜにして、効果的なところでそれぞれの威力を発揮させる。成功したら、気持ちがいい。
「みゆ、今、彼氏いないんだよね?」
「そうなんですよね。実は最近別れちゃって」
「一緒だ。俺も別れちゃった。好きでもないのに付き合ったから悪いんだけど」
「唯人君、いつもそうですよね? だめだよ?」
「だれのせいだと思う?」
顔をぐっと近づけられる。ケーキとは違う少し大人っぽい甘い香水の匂いがした。
「みゆのせいだよ。別にいいけどね」
あ、困ったように笑ってる。
整った塩顔が、ほんの少し歪むその瞬間が私はとても好きだ。
胸が、きゅん、となる。
それは、恋とは別の満足感。